会社の確定拠出年金とiDeCoは同じですか?

ご相談者様 DATA

【年齢】 40代後半

【職業】 会社員

【性別】 女性

【家族構成】 配偶者、子供2名

相談しようと思ったきっかけ(アンケート抜粋)

現在、確定拠出年金のある会社で勤務しています。友人がFPに勧められて、個人型確定拠出年金に加入しています。平成29年から全員加入できると話してくれました。友人が確定拠出年金をやっている会社の人も個人型に入れるって言っていたので、聞いてみようと思いました。会社でやっている確定拠出年金と、個人型のiDeCoは同じですか?

ご相談内容

子供たちの事も考えて、老後は迷惑かけないよう準備をしたいと考えていらっしゃいました。準備するのもなるべく有利な方法を取りたいとの考えです。税制優遇のある確定拠出年金について、会社で掛けていますが、個人で掛けた場合との違いが知りたいと相談に来られました。

ご相談でお話しした内容   

会社の確定拠出年金とiDeCoは同じですか?

ご相談者様には以下の3つに分けて解答させていただきました。

1.企業型と個人型の違い

2.個人型併用可能なケース

3.マッチングが可能なケース

 

 

 

 

1.企業型と個人型の違いについて

    誰が積立金を拠出しているかで分かれます(企業・個人)

企業が積立金を拠出しているタイプが企業型。個人が拠出しているタイプが個人型となります。企業型の中には従業員のお給料から積立金を拠出する選択制というものもあります。原則は労使合意した金額を会社が拠出します。ご相談者様は会社に確定拠出年金の制度がありますので、入社したことにより、一定のルールのもと確定拠出年金の加入者になっています。例えば給与明細や確定拠出年金の個人ページ(確定拠出年金の手続きは原則すべてをウェブ上で完結するため一人一人に管理ページが付与されます)に「企業拠出金」などと記載があると、それが会社が拠出してくれている積立金です。積立金の額は会社が決めています。一方で個人型の場合は、自分で手続きを行い、制度に加入します。積立金額はお給料から限度額の範囲内であれば自分で決められます。

 

    加入対象者が異なります。

企業型に加入できるのは、第2号被保険者で労使合意のもと、確定拠出年金制度を導入している会社の従業員です。会社に勤務していても制度を導入していない場合は企業型には加入することができません。個人型の加入対象者は、20歳以上60歳までの第1号被保険者の人。自営業や学生が該当します。第2号被保険者で会社員(会社で企業型に加入していて個人型に加入できない方もいます)・公務員なども対象です。第3号被保険者の専業主婦も加入できるようになりました。2017年1月から個人型の加入対象者はほぼすべての方に拡大されています。

 

    企業型と個人型は手数料負担者が異なります

企業型は会社がすべて維持管理手数料を負担し、給与から財形貯蓄のように天引きして、決められた掛け金を積み立てしてくれます。一方個人型は自分が選んだ運営管理機関の手数料を自己負担します。積立金の振込みも事業主払込か、個人口座から行う個人払込を選ぶことになります(基本的には会社がどちらか指定します)手数料は運営管理機関ごとに異なり、一般的には毎月500円ほど自己負担となり、1年間では6,000円になりますから、手数料もしっかり調べて少ない負担ですむ運営管理機関を選ぶことも大切です。企業型の方が個人型より手数料負担の面では有利と言えます。

 

    積立できる金額が異なります。

2017年1月から個人型の加入できる対象者が拡大され、

ほぼ全員加入が認められるようになりました。

ア、自営業をされている方は年額81.6万円。

イ、会社に企業年金がない会社員は年額27.6万円

ウ、企業型の確定拠出年金制度がある場合、企業型で年額66万円

  規約の変更を行うことで企業型を年額42万円

  個人型を年額24万円加入ができるようになりました。

エ、確定給付年金と確定拠出年金の両方の制度がある会社は年額33万円

  規約変更することで企業型を年額18.6万円

  個人型を年額14.4万円まで加入ができるようになりました。

オ、確定給付年金がある会社では個人型に年額14.4万円

カ、退職等年金給付がある公務員は年額14.4万円

キ、専業主婦(第3号被保険者)は年額27.6万円

 

    その他の違い

企業型は、会社の退職金制度の1つとして導入しているケースが多いです。従来の厚生年金基金や確定給付年金のように会社が管理するのではなく個人に管理してもらおうというものです。企業型を導入することによって会社は退職金の積み立て債務を負わなくてよくなりました。会社で積立金を運用する負担が軽減されるため最近は企業型を導入する会社は増える傾向にあります。企業型は会社の決められたルールによって運営されていますので、掛け金などは会社が決めています。掛け金は会社の経費(損金)として扱われ会社の税金が安くなります。会社にとっては、従業員のための福利厚生を手厚くすることができコスト削減にもつながっています。

個人型はすべて自分の自由意思で運営していけるものです。個人型では限度額の範囲であれば自分で掛金の金額を決め、自分でお金を出すことになります。掛金が全額所得控除の対象となります。しかし、確定申告・年末調整により税金の還付の手続きが必要となります。

 

 

2.個人型併用可能なケース

ここまで企業型と個人型の違いについてお伝えしてきました。これから具体的にご相談者様の場合の個別の回答です。

ご相談者様は④ウに該当します。会社が企業型を導入している場合で、なぜ個人型に興味をもたれたのか、伺ったところ、ご友人のと会話の中でご友人の投資信託と同じもので運用したいと思われたようです。運営管理機関によっても、企業型でも扱っている投資信託は異なります。NISAなど運用益が非課税になる制度を使って別に投資信託をご利用いただくこともできます。確定拠出年金専用のものもあるので、まったく同じというわけにはいきませんが、似た商品性のものを選ぶのも方法です。

また、金額面で会社の掛金が少なく設定されている場合、将来貯めて行ける金額も少なくなります。個人で掛金を払って税制優遇を受けながら老後資金を準備したい方もいらっしゃるでしょう。ご相談者様は金額も増やしたい考えです。現在毎月1万円が確定拠出年金に積み立てられています。

まずご相談者様には、会社の規定を確認されることをお勧めしました。現在企業型に加入中の相談者が個人型に加入するには、勤め先の制度で加入者に個人型加入を許可する規約になっている必要があるからです。特に企業拠出額を限度額の金額いっぱいで枠を設定されていた場合には、規約の変更を行い④ウの金額まで変更が可能にすることが必要なのです。

これが上記で説明した企業型の枠を年額42万円、個人型の枠を24万円とする記述です。もし会社の規約がそうなっている場合、毎月2万円まで個人型で追加ができるようになります。会社にとっては、規約の変更は大変手間のかかる内容です。もしお勤めの会社が個人型拠出を認めていないようであれば、まずは会社の考えを確認したうえで、組合があれば、組合に要望を出したり、担当の方へ希望を述べるなど行動されてはいかがでしょうか?従業員の将来を考えて企業型を用意してくれた会社です。個人型が必要と感じて規約の変更もしてもらえるかも知れません。

※規約変更ができないケースがあります。マッチング拠出の規定がある場合はできません。

 

3.マッチングが可能なケース

企業型年金規約に、会社が拠出する掛金に加え、加入者本人が掛金を上乗せして拠出することができる旨が定められている場合は、加入者本人からの拠出も可能です。これをマッチング拠出といいます。マッチング拠出が認められている会社でしたら、会社の掛金と同じ金額までお給料で受け取らず、個人の確定拠出年金口座に入れてもらうことができます。ご相談者様でしたら、会社が1万円出してくれていますので、1万円をお給料から会社分にプラスして掛けていくことができます。例えばお給料で1万円を受け取ると所得税(10%)・住民税(10%)かかっている方でしたら、お給料で受け取る金額は手取り8千円になります。これを会社が掛けてくれているのと同じようにこの20%の税金を払わず1万円すべてが老後資金として積立していけるようになります。あと20年間、給与で1万円を受け取ると192万円、確定拠出年金の積立金は240万円となり42万円も手取り額の差が開きます。さらに税金負担分を押さえるだけでなく、運用していくメリットも加わります。マッチング拠出が認められる会社なら給与から上乗せする方法がとてもお勧めです。ご相談者様のように、運用に積極的な方は、特に商品のスイッチングや配分変更など自由に行えて、NISAや一般口座運用で運用するより便利です。もちろん安全性の高い商品でも税金分有利になります。

 

まとめ

ご相談者様は、確定拠出年金のメリットを理解され、企業型と個人型の違いを確認されたことで、確定拠出年金の追加をすることに意欲的です。企業型が用意されている会社の場合、個人型でプラスすることができるかどうか、マッチングが用意されている会社なのかで方法が異なります。ご相談者様には、会社で確認をしていただくことから始めていただきました。お子様も今は学費が少ない時期です。もし学費への負担が大きくなった時には金額変更が可能な事もお伝えしました。できるときにたくさん準備したいとのことでした。税制優遇の受けられるこの制度をまずはしっかり活用し、将来の公的年金の不足金のカバーに充てていただきたいものです。

この記事を書いた人
木田 美智子

「今と未来を幸せに」の老後資金計画を実現!あなたらしくの初めの一歩をデザインします。

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